退職金共済制度の仕組み

Ⅰ.農林漁業団体職員退職給付金制度(通称:「制度」)

1.概要

(1)
特退共(特定退職金共済制度)は所得税法施行令第73条の「特定退職金共済団体が行う退職金共済制度」として認められているもので、掛金等について税法上の優遇措置があります。
(2)
本会では「農林漁業団体職員退職給付金制度(通称:制度)」という名称で特退共事業を行っています。
(3)
特退共は、現在JAにおいて最も普及している退職金外部積立制度であり、JAグループでは本会および8府県の共済会が実施しています。
(4)
積不足による掛金の追加拠出がないことから広い意味での確定拠出型に位置付けられる制度です。
(5)
職員毎に決められた掛金額を毎月積立て、退職時に掛金累積額とそれに付加された利息が給付される、積立貯金型の退職金外部積立制度です。
(6)
給付還元利率は変動利率で、半期毎に見直します。
(7)
本会が実施する「制度」では、必要諸経費を控除の上、給付還元利率を設定しているため、企業年金制度のような手数料は一切不要です。

2.掛金

(1)
掛金は職員1人あたり月額30,000円(年額360,000円)が税法上の上限となっています。
(2)
本会が実施する「制度」では、1口あたり月額100円、5口以上300口の範囲で職員毎に口数を設定し、契約月から加入者が退職する月まで掛金を払い込みます。
(3)
退職給与規程の支給基準に達した職員の新規加入、既加入職員に係る掛金の増額(増口)は随時可能です。
(4)
掛金の減額(減口)は、休職の場合や、「制度」退職給付金が退職金要支給額を上回った場合など、所定の要件を満たした場合に限られます。
(5)
掛金は、全額加入団体が負担します。個人負担はできません。(所得税法施行令第73条第1項第1号)
(6)
掛金全額が加入団体の損金となり、付加利息も非課税となります。(法人税法施行令第135条)
(7)
損金に算入できる掛金は、年度内に払い込んだ掛金に限られます。
未払金を計上して、損金に算入することはできません。(法人税法基本通達9-3-1)
加入および増口例

 退職金要支給額の増額に伴い、口数を増やしていくイメージ

3.節税メリット

 退職給付費用の一部を「制度」掛金(非課税)で積立てることにより、内部引当(有税積立)を圧縮し、課税額を減少させることができます。

4.退職給付金の支給

(1)
退職者が発生した場合  
加入団体からの請求に基づき退職給付金を支給します。
「制度」退職給付金は、退職者の個人口座に送金します。
(2)
懲戒解雇
懲戒解雇等の事由により、退職金(「制度」退職給付金を含む)を支給しない場合は、「制度」退職給付金は加入団体へ返還できないことから「制度」全体の今後の給付財源に充当されます。 (所得税法施行令第73条第1項第4号)
懲戒解雇等であっても退職金を全額もしくは一部支給する場合はその金額の範囲内で「制度」退職給付金を支給します。
 
(3)
受給方法
退職給付金の受給は、以下の3通りから選択できます。
一時金
年金
一部年金(給付金の一部を年金化し、残額を一時金として受給できます。)

5.注意事項および税務

(1)
団体が「制度」に加入した場合、全職員の加入が原則となります。 (所得税法施行令第73条第1項第10号)
<例外>  
退職金が発生していない職員
1年以内に退職することが明らかな職員
上記①②以外の場合、任意に加入させないことはできません。
(2)
「制度」の被共済者は使用人に限られ、加入事業主(役員)は加入できません。ただし、使用人兼務役員は加入できます。 (所得税法施行令第73条第1項第3号)
(3)
「制度」退職給付金(掛金および付加利息)は加入事業主に返還できません。 (所得税法施行令第73条第1項第4号)
(4)
退職給付金を「一時金」として受給した場合には退職所得扱いとなり勤続年数に応じた退職所得控除が受けられ、「年金」として受給した場合には受給額が公的年金に係る雑所得扱いとなります。 (所得税法第30条、同法第31条、同法第35条、所得税法施行令第72条、同令第82条の2)